コラム

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美容師国家試験

春と秋、国家試験の季節が近づくと、私の胸の奥には今も独特の緊張感がよみがえってきます。まだ夜が明けきらない時間、寒さに身を縮めながら家を出る受験生。眠い目をこすりながら、それでも“今日の日のために”積み重ねてきた練習を思い返し、もう一度手を動かして確認してから会場に向かう姿を想像すると、胸がぎゅっと締めつけられるような気持ちになります。

試験会場となる美容学校の教室は、普段のにぎやかな授業とは違い、張り詰めた空気に満ちています。大きな窓から差し込む朝の光は柔らかいのに、冬の試験の日にはその窓から冷たい空気まで伝わってきて、ああ、ここに立つ受験生はどれほどの覚悟で今日を迎えたのだろう、と自然に想いが重なります。それでも彼らは半袖で、冷たく震えるローションに手を浸し、ウィッグを濡らします。その指先には、先生の言葉、家族の応援、仲間との励まし、何度も壁に当たりながら越えてきた日々——そのすべてが宿っているのです。

国家試験の実技には、努力の痕跡が隠しようもなく表れます。特にオールウェーブは、練習量も、心の持ちようも、指先の誠実さまでもが姿となって現れます。ウェーブの流れが美しくつながった瞬間、そこには受験生が過ごしてきた“見えない時間”が確かに刻まれています。私はこの技術を見るたびに、「美容」という職業がいかに“人の手で積み重ねられていく尊い営み”であるかを思い知らされるのです。

そして、受験生の努力の背景には、美容界全体の大きな支えがあります。美容学校は技術だけでなく、人としての姿勢まで育て、若い力をしっかりと未来へ送り出しています。理容師美容師教育センターは、全国の教員がよりよい指導を行えるように研修や教材を整備し、美容界の教育レベルを絶えず引き上げています。理容師美容師試験研修センターは、公平で揺るぎない試験制度を守り続け、国家資格としての社会的信頼を築いています。そして、美容組合は全国で働く美容師に寄り添い、制度の理解、自主衛生管理、環境整備など、多方面から業界を支えています。

こうしたひとつひとつの力が繋がり合い、まるで一本の太い糸になるように、美容界は支えられています。この糸があるからこそ、美容師免許は価値ある国家資格として社会に認められ、美容師たちは安心して働き、お客様の人生に寄り添う仕事を続けていけるのです。

現在私は、美容界を代表して制度や管理美容、美容師法の大切さを伝える役目をいただいています。この立場で各地を訪れ、現場の声や美容師一人ひとりの想いに触れるたび、美容という世界を支える“見えない努力”がどれほど尊いものかを痛感します。美容師の免許証は、単なる資格ではありません。それは「技術を磨き続けた証」であり、「支えてくれた人たちとの絆」であり、「美容師として生きていく覚悟」を示す一枚なのです。

試験の日、緊張で硬くなった手で大切な技術を刻んだ受験生。

その受験生を信じて送り出した学校の先生、家族、仲間。

公平な制度を守るために日々奔走する関係機関。

そして、美容師として働くすべての人を支える美容組合。

美容師免許証には、これらすべての想いが重なっています。

この免許証を胸に、お客様に向き合い、人生の節目に寄り添い、日常に彩りを添える——美容師とは、そんな“人の心に触れる仕事”です。

この温かくて、厳しくて、深い世界を支える一員でいられることに、私は今日も誇りを感じています。

 

大阪府美容生活衛生同業組合理事長

北里 哲郎

 

私の尊敬する美容師のコラムを紹介します。

 

支え合い精神の組合について

 

みなさんは「支え合う」ということを意識したことがありますか。

私もそうなのですが普段の生活では仕事や家事に追われてあまり意識したことは

ないのではないかと思います。

しかし、私もみなさんも普段から誰かを支えているのです。

お店を支える。会社を支える、家庭を支えるなど、あまり意識していないところで

いろいろな方を支えているのです。

仏教では「縁」という言葉があります。

「ご縁」とは人間や動物、植物と生きとし生けるもの全ての存在が

お互いに関係しあってるということです。

相互に関係しあってるからこそ、全てのものがそれぞれに大切だと

私は考えております。

美容組合も美容界や美容師を盛り上げ支え合う「ご縁」の場だと思います。

先日 昨年加入致しました美容組合の総会に行ってまいりました。

お恥ずかしい話ですが美容組合の存在を知らなかったのです、

先輩美容師から誘われるまで。

総会に伺いますと加入歴50年で表彰された大先輩の先生方ばかり

緊張しましたがお一人お一人に挨拶に伺ったら快く迎え入れて頂き

またご縁が広がりました。

正直ですが美容組合に入らなくても今日まで営業することが出来ておりましたので

加入の際は先輩が誘ってくださるからという理由だけでした。

加入してみて分かったことですが勉強会や保険、

ここでは書ききれないくらいに美容師や美容室を守ってくれる

沢山の制度がありました。

オーバーストア、人材不足、苦悩に向かい合ったときこそ、

それをお互いに支え合うコミュニティーが必要になる。

仏教でいえばある種のサンガ (僧団) ですね。

大乗的なサンガ意識というか、みんなで苦というものを探求し、

支え合っていくような形でのコミュニティーが、これからの美容界には

必要なのではないかとも思います。

家族や友人、美容室で一緒に働いている人はもちろんですが、

なぜこのご飯が食べられるのか、道を歩けるのか、全ての行動をする時に

見ず知らずの誰かが知らないうちに支えてくれていることを

感じてみてください。

ボランティアのように誰かの支えになるように行動することも

尊いことだと思いますが意識していなくても誰かの支えになっていることも

尊いことだと私は思います。

私たちは沢山の方の味方であり、沢山の方が味方にいるともとれます。

美容組合とても心強いですね。

どうぞみなさん支え合っていることを意識してみてください。

そうすることで美容組合、美容界はもっと繁栄するのではないでしょうか。

 

富田林支部 aimere hair(エメールヘアー)木全 剛司(きまた つよし)

女性モード社 美容界より